「青柳瑞穂の生涯」(新潮社刊)で2001年の日本エッセイスト・クラブ賞を受賞したピアニスト青柳いづみこの近著「阿佐ヶ谷アタリデ大ザケノンダ」を先日読了し、60年近くナゾだった彼女の愛称の由来が分かった。実は俺は彼女と中学の同級生。当時からピアノの才があり、一番世に出るのが早いだろうと思われていた彼女が、なんで「ジョンコ」と呼ばれるのか不思議だったのだ。 この「阿佐ヶ谷アタリデ……」には、彼女が生まれた時、色が黒くてぬるぬるしていたので「まるでどじょうみたい」と思った両親が「どじょんこ」と呼んでいたのが、次第に「ど」がとれて「じょんこ」になったらしいとあった。芸大を出てフランスに留学した時も「いづみこ」は言いにくいので「ジョンコ」と呼ばれていたとか。 いづみこがフランスのマルセイユ音楽院を首席卒業して、イイノホールで凱旋リサイタルを開いた時、俺は公演パンフレットの原稿書きを手伝ったこともあるのだが、愛称の由来までは知らなかった。とにかく中学のころから鼻っ柱が強くて学年主任の”珍魚”こと大沢先生との大げんかは俺らの学年の語り草。 ある時、昼休みには校庭で遊ぼうというクラス決議がなされ、外に出なかったいづみこらを学級委員が詰問したところ、すっくと立ったいづみこが「生理です!」これにはたまげたのだった。 ドビュッシーの研究家として知られる彼女のコンサートには、義理で何度か行ったことがあるのだが、どうも俺はクラシックが苦手で。でもこの新著に紹介された阿佐ヶ谷のジャズイベントには、俺の知ってるミュージシャンの名前も散見されて、親しみを覚えたのだった。 この本にはいづみこの祖父でフランス文学者の瑞穂と交流のあった井伏鱒二ら文人との思い出なども出てくるのだが、酒豪いづみこの阿佐ヶ谷でのレパートリーの店もゾロゾロ出てきて、下戸の俺なぞ、ホントによく飲むなぁと感心したのです。 |
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