新聞記者の世界には「夜討ち朝駆け」という言葉がある。と言っても、駆け出し福島支局で連日の「夜回り」をやったのは、4年目の1976年に遭遇した県庁汚職事件の時だけ。どこまで続くぬかるみぞと連日ハイヤーを呼んで夜回りをしたのは、82年5月から翌年1月までの警視庁警備公安担当だった時と、83年2月に経済部に異動となり、通産省(現経済産業省)の5カ月、大蔵省(現財務省、83年7月〜85年7月)、農水省(85年8月〜87年3月)、日銀(87年4月〜88年4月)担当のころだ。 サツカン(警察幹部)、キャリア官僚の自宅に夜な夜な押しかけ、業務上知り得た秘密をばらせと迫る地方公務員法違反同教唆、国家公務員法違反同教唆の行為が夜回りの実態である。朝刊用の原稿を出稿し、夜7時のNHKニュースを見て何もないと、呼んでおいたハイヤーで夕メシに出、午後10時ごろの帰宅時間を狙って出撃する。その間、酒に強い奴は一杯引っ掛けることが多いが、俺はもっぱらコーヒーで時間をつぶした。 当時は「ド・トール」などのチェーンはまだなく、昔ながらの喫茶店が多かったが、赤坂と六本木に12時近くまでやっている茜屋珈琲店という店があった。今から30年以上前に1杯995円。店の入り口にお釣り用のピカピカの5円玉が山のように入っている金魚鉢のお化けのようなガラスの容器があった。そんな高い店なのに、同伴出勤する美形のお姉さんなどで、けっこう混んでいた記憶がある。 さて、このブログを書かせてもらっている国立の「書簡集」のコーヒーが今春1杯700円から1000円にアップした。駅から徒歩8分の立地。駅前にあまたのコーヒーチェーン(1杯220円〜300円台)があるなかで、よく30年も600円コーヒーを続けてきたなぁと感心していたが、昨秋食べ物のメニューを大幅に絞ったうえ、700円に値上げし、さらに新年から1000円に引き上げた。 きのう久々に「書簡集」を訪れ「客の入りはどう?」と尋ねたら「ダメですよ。常連の近所のおじさんは来なくなっちゃった。でも八王子からこんな店が嬉しいと来店する方もいる。生ある限り店を続けます」と書簡集主人。故・山口瞳も愛した「書簡集」。こういう店はつぶしてはならないとは思う反面、1000円コーヒーは高いことは高い。コロナで外食の店は辛い日々が続いている。俺としてはこの店が閉店しないことを祈るばかりだ。 |
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