きのうの毎日新聞夕刊1面コラム「近時片々」の最後の項に「若き日重ね、見た人も多いのでは。山口百恵さんの引退コンサート、NHK総合で放映され話題に」とあった。そう土曜日夕方、1980年10月5日に日本武道館で行われた百恵ちゃんの2時間余のラストコンサートを再放送したのだ。05年までの国立時代は百恵御殿のすぐそばに住んでいた俺。外出から戻って後半の45分を正座して見ました。 ブルーのドレスから純白のラスト衣装に着替えた百恵ちゃんは、髪に花飾り。さすがに最後の歌とあって、出だしは思いが詰まって音を外したが、そこはプロ根性。時折涙を掌でぬぐいながら「さよならの向こう側」を歌い上げ、白いマイクを静かにステージ中央に起き、天に昇っていく。41年前のステージでも見た白いマイクはこの歳になってもくっきり覚えている。 21歳での引退。とてつもなく圧倒的な存在感。すごいねぇ。左上腕部の種痘の跡がずいぶんと目立つなと妙なところに目が行った。俺はこの「さよならの向こう側」の♪Thank you for your smile……♪という下りがとても好きで、秋田時代(95〜98年)に通ったカラオケスナックでは、ラストの曲はこれと決めていて、♪何億光年……♪と歌い出すと「えー、もう帰っちゃうんですか」とよく言われたものだった。 土曜は百恵ちゃんのラストコンサートのほかにも見るべき番組があった。歴史探偵半藤一利さんのETV特集。「文芸春秋」や「週刊文春」の編集長も務めた半藤さんは大著「昭和史」を残し、先月90歳で亡くなったばかり。東京・向島生まれで東京大空襲で死にそうな目に遭った半藤さんは「戦争だけは絶対にしてはならない」とべらんめえ口調で語る。 東大ボート部時代に慶応にわずかの差で負けオリンピックに出場しそこねた話や、文春時代、女性社員に慕われ「半ちゃんガールズ」の法被を作ってつるんで遊びに行っていたなどのエピソードが紹介され、ああいう風な洒脱なじいさんになりたいものだと思わせる放送だった。世相から昭和時代を描いた半藤さんの「B面昭和史」は2015年の俺の本のベストテンに入っているが、もう一度、半藤さんの「昭和史」とか「日本のいちばん長い日」を読み返してみようかなと思ったのである。
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