今、書店でベストセラーになっているのは1月に芥川賞を取った現役大学生、宇佐美りんの「推し、燃ゆ」である。やはりその時、直木賞を受賞した西條奈加の「人(うら)淋し川」は初めて読む時代小説作家だが、早速手に取り、たんたんとした描写が非常に好もしく、彼女のこれまでの代表作「涅槃の雪」(中山義秀文学賞を12年に受賞)、「まるまるの毬」(吉川英治文学新人賞を15年に受賞)を文庫本で求め、これからの寝床の楽しみとした。 で、「推し、燃ゆ」はどうしたもんだろう。最近の芥川賞は村田沙耶香の「コンビニ人間」(16年)を除いて、ほとんど共感できていない。しかし、そのままにしておくのもなぁと思っていたら、月刊文芸春秋の3月号にノーカット掲載とあるではないか。派手なピンク色の表紙の単行本が税込み1540円であるのに対し、3月号は1000円である。 それで、国立・増田書店で月刊文春3月号を求め、1月に亡くなった歴史探偵、半藤一利さんを偲ぶ歴史家、磯田道史氏や保坂正康氏らの文章をゆっくり読んだのち、先日寝床で「推し、燃ゆ」に取り掛かったのだが、残念ながら文章が全く頭に入ってこない。冒頭の2、3ページはそれでもちゃんと活字を追ったが、面白くもなんともない。それで文春掲載の50ページ余をパラパラ最後まで一応めくったが、どこも引っ掛からない。こりゃ、ダメだ。 俺のような年寄りには「推し」の語彙はないからな。どうもハタチそこそこのお嬢ちゃんの書くものなんて、どうでもいいわいという年寄り特有のすねみのなせる業か。文芸の編集者をしている次女に「読んだかい?」と聞いたら「まだ。三島由紀夫賞を取った『かか』は読んだけど。お父さんには合わないと思う」だと。業界人が最新の芥川賞受賞作を読んでないなんて、いいのかね。 |
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