隠居志願のつぶやき2017

[PREV] [NEXT]
...... 2021年03月24日 の日記 ......
■ 本のプレゼント   [ NO. 2021032401-1 ]
 日経に新聞協会賞を取られた太陽神戸三井銀行の合併を抜かれ、心身ともにボロボロになって出社できなくなった30年も前、仲のよかった伊勢丹のT広報部長から、復帰までの足慣らしにウチの広報室に通っておいでよというありがたい申し出があった。
 そこでは毎月1回、幼稚園のようにその月に生まれた社員(女性の方が圧倒的に多かった)のお誕生会が開かれ、お菓子とジュースで乾杯。T部長がポケットマネーでそれぞれにふさわしい文庫本をプレゼントしていた。これは学ぶべき風習と思い、これはと思う本好きの方に誕生祝い、昇進祝いなどの名目で本を差し上げてきた。とはいえ、その人にふさわしい本選びはかなりむずかしいのだ。
 社会部の警視庁担当だった38年前、一緒だったのが中国語勉強会の組閣幹事長Sくん。彼と同じ山形出身で、広告局にいたTくんとはSくんの紹介で卓を囲むようになり、ある時、タバコ部屋で新潮社の天皇といわれた男の夫人がまとめた私家版の「編集者斎藤十一」を手にしているのを発見。俺も読んだばかりで、こんな珍しい本を読む奴が広告セクションにいるのかと刮目した。
 で、Tくんがデスク、部長に栄進するたびに筆ペンで添え書きして単行本を贈ってきた。デスクになった時は、さわやか福祉財団理事長の堀田力さんが法務省人事課長の時に書いたものをまとめた「おごるな上司」、部長になった時は電通マンだった作家、藤原伊織が広告業界をテーマにした小説「シリウスの道」。局長になった時は確か葉室麟の戦国武将、立花宗茂の真っすぐな生き方を描いた「無双の花」を上げた記憶がある。
 6年前役員になったTくんはエラくなったのに、長幼の序を重んずる男で、1月の俺の誕生日にはおいしいお饅頭をいただいた。これはお返しをせずばなるまい。彼の誕生日はきのう23日と調べはついている。で、本日の勉強会の時に、お祝いの本を差し上げるつもり。
 作家の黒井千次がかの大読売に連載していたコラム「時のかくれん坊」をまとめた中公新書「老いの味わい」である。この新書は5年ほど前に手に取り、帯に「年齢は常に初体験なのである」と記されているのに感じ入った。実に内容の深い本なのだ。まだ60代前半と若いTくんだが、歳は平等にめぐってくる。たぶん自分では絶対に書店では手を伸ばさない類の本だが、この先必ずためになると思って選んだのだ。

...... トラックバックURL ......
  クリップボードにコピー

...... 返信を書く ......
[コメントを書く]
タイトル:
お名前:
メール:
URL:
文字色:
コメント :
削除用PW:
投稿キー: