ガンクビ(顔写真)、サツカン(警察幹部)、マルボー(暴力団)、コロシ(殺人事件)、タタキ(強盗)、マグロ(轢死体)、ヤキトリ(焼死体)――。記者になりたての頃、これらの警察、記者の業界用語を普通の人々の前では使うなという指導を受けた。身内が列車にひかれて悲しみにくれている時に、マグロ呼ばわりされては遺族もたまったものではないだろう。 月曜午後2時過ぎ、西国駅から北に100bの「オーケー」に夕食用の惣菜の買い出しに行った帰り、駅まで戻るとウチの団地の方角にモクモクと真っ黒な煙が立ち上っているのが見えた。こりゃ焚き火なんてもんじゃない、火事だ!と愛車真っ赤なポルシェ号を走らせると、団地西側の大通りの向こう側30bくらいのところで戸建て住宅から黒煙が上がり、メラメラと立ち上る炎も見えた。 団地内の知り合いの老夫婦も道路に出て火事見物をしていた。けっこうな台数の消防車も集まり、火はほぼ1時間くらいで消し止められた。まずはよかったと帰宅し、広報担当の理事さんに4月号広報にからんでメールすると「在宅勤務だったのに最近はサイレンの音が多く、火事にはまったく気が付きませんでした。一人お亡くなりになったとか」の返事。 えーっ!ヤキトリが出たのか。これだから火事は怖い。現場を離れたあと、焼死者がいたことが分かるケースもあり、火事は何があるか分からないから気を付けよという50年も前の教えが蘇った。 昨夜、地域の防災会の会合に出たら、「近くの防災委員がいち早く消防に通報したので延焼は避けられたが、一人暮らしの68歳の男性が亡くなった。週3回透析に通っている方で、この日は透析から帰ったばかり。近所の方によるとボーンというすごい音がしたとのこと。原因は調査中」という説明があった。この地区で火事があったのは30年ぶりとのことだった。 さすがにその席でヤキトリのような不謹慎な言葉が飛び交うことはなかった。記者になりたてのころは、なんとなく当事者のような気分になれるのが単純にうれしく、こんな隠語を使いたがったものだが、普通の人間が分かる言葉を使わないとな。コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長も会見で「まん防」とは言わない方がいいよ。魚のマンボウに聞こえる。「まん延防止等重点措置」と、しろうとが聞いても分かるようにしなけりゃね。 |
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