隠居志願のつぶやき2017

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...... 2021年06月03日 の日記 ......
■ 5月に読んだ本   [ NO. 2021060301-1 ]
 5月末にマンション管理組合の総会があり、その準備から逃れたくて、1月に「心(うら)淋し川」で直木賞を取った西條奈加の旧作ばかりを読んでいた気がする。40代のころは藤沢周平さんの世界に浸りきり、50代は山本兼一、60代では葉室麟、宇江佐真理の時代小説を読むのが楽しみだった。しかし、山本、葉室、宇江佐の三氏が次々に亡くなり、新作が出たら必ず読むという作家がいなくなってしまった。
 この西條奈加というまだ50代の女性作家は波長が合いそう。俺は某団体に頼まれてこの十年やっている読書感想文の添削と読書講座で、お気に入りの作家に出会ったら、エッセーでもなんでも全部読むと楽しくなると強調しているのだが、この西條さん、山本一力のような手抜きがないので、ずっと読み続けそうだ。
 まず手にしたのが、12年の中山義秀賞を取った「涅槃の雪」。天保の改革に抵抗する与力と女郎あがりの女性のふれあいを描いている。佳作だ。次に15年の吉川英治文学新人賞を取った「まるまるの毬」。和菓子屋「南星屋」の家族のお話。次が女性ながら口入れ屋を切り盛りするお藤がすばらしい「九十九藤」。京都を舞台にした絵師の物語「ごんたくれ」。
 裏稼業をしている住人ばかりが住む長屋のお話「善人長屋」「閻魔の世直し」「大川契り」の三部作。この「大川契り」はなかなか読ませた。映画化しないかな。とはいえ、ヒロインのあだっぽい女将をできる女優が、ちと思いつかない。
 西條作品以外に読んだのは、久世光彦著「『女』のはなし」。「時間ですよ」「寺内貫太郎一家」などを手掛けた伝説のプロデューサーがタッグを組んだ向田邦子などの思い出を綴る。北上次郎著「阿佐田哲也はこう読め!」。「麻雀放浪記」などの名作を生んだ色川武大のもう一つの筆名、阿佐田哲也。このギャンブル小説を読もうかと思ったが、十冊以上持っていた文庫は全部手放してしまっていた。
 「岸恵子自伝」。大女優、岸恵子は文章もベラボーにうまいのだ。文春編集部「半藤一利の昭和史」。ことし1月亡くなった半藤さんの仕事の全容がわかる。楠木新著「定年後の居場所」。生保会社に勤めながら文筆の道に入った楠木さん。ほんとに居場所を見つけるのは難しいんだよね。開沼博著「日本の盲点」。東日本大震災の直前「フクシマ論」を上梓していて、いっとき売れっ子になった開沼氏。インタビューをしたこともあるのだが、ちと分かりづらい論の運び方である。

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