「アマタツ!」天気予報士を呼ぶちょっと高い声に記憶のあるフジテレビの朝の情報番組「とくダネ」の司会を22年勤めた小倉智昭(74)を取り上げたNHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」を8日夜みた。 小倉はこの3月26日をもって、情報番組のメーン司会最長記録に終止符を打ったばかり。小倉の降板が決まり、NHKがラスト3カ月に密着した。5年前、ぼうこうがんにかかり、尿漏れパンツが手放せないという小倉の後ろ姿はさすがに歳を感じさせる。しかし、毎朝6時過ぎにスタジオに入り、即席みそ汁をすすりながら、新聞各紙に目を通し、スポーツ紙をチェックする姿はプロを感じさせた。 ライバルでテレ朝でモーニングショーをやっている羽鳥慎一アナ(今はこちらの方が視聴率がいい)も登場し「小倉さんのしゃべりはすごい」と感心してみせた。俺は民放の朝のワイドショーはコロナがらみでうるさいので見ず、NHKの「あさイチ」を時折のぞく程度なのだが、小倉のコメントは通常人の通常感覚が反映されていたのではないか。 昨今は高飛車な物言いが嫌われていたようだが、小倉は「誰かが言わないと」と強く思っていたみたい。同じ年長組でも田崎史郎のように政権のちょうちん持ちが透けて見える奴とは違う。 その小倉が秋田生まれで幼い頃、吃音症に苦しんでいたことを始めて知った。吃音を克服するため、あえてしゃべることを仕事にし、テレ東のアナに採用され、競馬中継を大橋巨泉に褒められ29歳でフリーになった。第一志望だったフジテレビの「とくダネ」のメーン司会となったのが52歳の時。その当時は俺も時々見ていた。 「歳をとって人の名前が出てこないことが増えて」と小倉。NHKのカメラは小池百合子の次に挙げるべき森田健作の名前を度忘れし「千葉県知事が」とちょっと口ごもる小倉を残酷にも映し出していた。 小倉は「自分から辞めさせてと言えばかっこよかったんだけど……。『とくダネ』の名を次の番組に使うのは止めてくれと頼んだ。テレビは本当に魔法の箱。仕事が来ないのはつらいよ」とまだまだやる気十分だが、他のバラエティー番組に呼ばれ、ちょっと議論の輪に入れなかった姿も映し出した。うまく歳を重ねるのは難しいことをつくづく思わせる番組だった。 |
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