同時代にこの人がいてよかったと思うのが、ジャーナリストで評論家の立花隆さんだ。絶大な人気を誇った首相を退陣に追い込んだ「田中角栄研究」だけでなく、宇宙体験、脳死、サル学、農協、東大、共産党、がんなど多方面に関心は及び、分かりやすい言葉で本質を解き明かした。 その「知の巨人」立花さんが4月30日に80歳で亡くなったことが、きのう23日明らかになった。幾多のベストセラーをものした巨人の死が50日以上も表に出なかったのは不思議な気がするが、故人の意思により葬儀は樹木葬で営まれたという。 立花さんといえば田中金脈の研究で世に出、元首相の裁判全てを傍聴したことで名高いが、氏自身は「田中のおかげでもっとやりたい仕事が出来なかった」とこぼすほど、生命とか宗教などへの関心が深かったように思う。一番のお気に入りの著作にギリシャやトルコの遺跡を巡った記録「エーゲ 永遠回帰の海」を昨年出た文春新書「知の旅は終わらない」の中で挙げているほどだ。 その立花さんの声を一度だけ電話で聴いたことがある。まだ社会部にいた80年代前半、ロッキード裁判か何かに絡んでデスクに立花さんの談話を取れと命ぜられ、仕事場に電話したら原稿書きの真っ最中だったみたいで「すまないが30分後に掛け直して」と言われ、キッチリ30分後に電話を入れたら理路整然とした言葉が返ってきた。 クラシック音楽好きでもあったから、私家版のCDをサントリーホールの裏手で家族総出で販売しているところに出くわしたこともある。仕事場「ねこビル」の本棚全ての蔵書20万冊を背表紙が分かる形で写真に撮り、なぜその本がそこにあるのかを語った「立花隆の書棚」(中央公論新社刊)を13年5月に政策情報誌の書評欄に取り上げたこともあった。 もうこんなあらゆる分野に通じた人は出ないのではないか。どこかで「小説は読まない」と述べられているのを見て、アレーッ?と思ったことがあったが、「知の旅は……」で中高時代に古今の文学書を読み尽くしていたことを知り、納得した。 立花さんの死を知ったきのう、福島で世話になった伝説のスナックの美人ママ、ひとみちゃんが22日に亡くなったとの知らせを受けた。立花さんの死も残念だが、ひとみちゃんの死も哀しい。お二人のご冥福を祈りたい。 × × × × 今週の拙宅の花は藤色の大輪のバラ「ライラッククラシック」と白いバラ「マルシア」、それに薄桃色のスターチスです。 |
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