今はもう全くマンガは読まなくなったが、ガキの頃は月刊「少年」連載の「鉄人28号」や週刊「少年サンデー」「少年マガジン」は必読書だった。夕刊サラリーマンページの兵隊頭をしていた89年には、コミックモーニング連載の「課長島耕作」の作者、弘兼憲史氏、ビッグコミックオリジナル連載の「釣りバカ日誌」の原作者、やまさき十三氏、「総務部総務課山口六平太」の原作者、林律雄氏にインタビューし、サラリーマン漫画の作り方を大きく取り上げたこともあった。 松下電器に勤務経験のある弘兼氏は、会社内の派閥によく通じており、やまさき氏が「スズケン建設」の役員キャラクターについて、小学館の幹部の顔を思い描いて作ったというのには笑った。林氏はカレンダーに株主総会とか社内運動会などの行事を書き出し、その季節にピッタリなテーマを選んでストーリーを考えたというのに納得した覚えがある。 そんな俺だが、あの目ん玉の大きい少女マンガが苦手で、手にしたことはない。それなのに最近、「ポーの一族」などの代表作のある女流漫画家、萩尾望都の「一度だけの大泉の話」という本を面白く読んだ。女流漫画の世界で初の紫綬褒章を取った萩尾は、同じく女流漫画家の走りで京都精華大学長も務めた竹宮恵子と1970年から2年ほど東京・大泉にあったアパートに一緒に住み、創作活動をしていたことがある。 竹宮が2014年に自叙伝をものし、大泉時代を懐かしんだことから、手塚治虫、藤子不二雄、石ノ森章太郎らの「トキワ荘」のような存在と考え、女流漫画家草創期のお話としてドラマ化しようとした動きが起きたが、萩尾は「私には関係ない」とインタビューや対談の申し出を断り続けた。 この本は先輩格の竹宮と萩尾の気持ちの行き違いをるる述べたもので、二人の感情のもつれは相当なものと思い知らされた。本の中で萩尾は竹宮の作品は別れてから一度も読んだことがないと何度も繰り返している。漫画の世界で名声を得たはずの萩尾は、若き時代、竹宮の言葉に大きく傷つき、体調も崩したらしい。少女漫画好きな人には必見の書と思えたが、俺なんかこの二人の大御所の作品を全く知らないのに、けっこう面白く読んだのだ。 × × × × 今週の拙宅の花は、薄い臙脂色のバラ「プレシャスモーメント」と白い大輪のバラ「アバランチェ」、それにピンクのクルクマ「オールドローズ」です。 |
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