マンション管理組合理事長の仕事も5月末に終了し、素浪人となってすっかり社会とのつながりがなくなったように思われた俺だが、ただ一つ読書感想文の添削のアルバイト仕事で世の中とつながっている。これは竹橋の会社時代の先輩から10年前に引き継いだもので、某団体が運営している学生寮の学生を対象に、毎月課題図書を1冊指定し、ひと月後に送られてくる感想文のチェックをするというもの。課題図書の他、もう1冊自由図書の感想文も見る。 俺は読書感想文が本ギライを生む最大の要因になっていると考えている阿呆な人間である。このため、面白い本を読んだら友達に「ここがよかったよ」と言いたくなるだろ。だから、友達に話すように自分の本への思いを文字に落とし込んでと、毎年強調している。それだけに読んで絶対面白い本を課題図書に選ばなければいけない。 今の相手は大学1年生の時から受け持っている文系理系の男女11人。1年生の時は20人いたが退寮者もあって今の人数になった。11人が11人とも面白いと思える本はそうないのだが、その辺は勘弁してもらって、出版社に勤める次女の力も借りながら課題図書を決めている。 課題図書だけを指定して、感想文に目を通す気力がなかなかわかないことがここ数年続いていて、俺の書斎にはいつも未読の感想文が溜まっている状態が続いていたが、素浪人となり時間は有り余っているため、この夏彼らの文章にピッチを上げて目を通し、ことし3月の「ジェノサイド」(高野和明著)、5月の「総理の夫」(原田マハ著)、6月の「残酷な進化論」(更科功著)と、4、5、6月の自由図書すべてを今週見終わり、団体の担当者のところにレターパックで送った。 まもなく夏休み用の課題に出した「蜩の記」(葉室麟著)の感想文が到着する見込みだが、手元に未読の文章がないというのは、実にすがすがしいのである。 |
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