隠居志願のつぶやき2017

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...... 2021年09月28日 の日記 ......
■ 「新聞記者、本屋になる」   [ NO. 2021092801-1 ]
 街中の本屋さんがどんどん店を閉めている今、毎日新聞の論説委員を58歳で辞め、台東区の田原町で4年前本屋を始めたおじさんがいる。その4年間の軌跡を記したなかなか面白い新書が出た。落合博著「新聞記者、本屋になる」(光文社新書)である。俺も同業者だったのでタイトルに惹かれて手に取ったが、コロナ禍でしぶとく営業を続けるさまに、こういう第二の人生もあると感じ入った。つぶれずに続けてほしいものだ。
 8年後輩にあたる落合氏は運動部育ちで、神戸製鋼の亡くなった平尾誠二らがラグビーの日本選手権7連覇した時に、取材で深くかかわり新聞連載を基に本にもしている。大阪本社の運動部長を務めたあと、東京本社の論説委員となった。紙面で名前は見たことはあるが、全く面識はない。
 論説室での着任挨拶が振るっている。「嫌いな言葉は夢と勇気と感動です」と言ったと本にある。根っからのへそ曲がりで人が右と言ったら、左に行くタイプなんだろう。夢や感動が嫌いで、運動部の記事は書けないとは思うのだが、これは韜晦趣味なのだろう。
 論説委員を辞める数年前から、第二の人生は一人書店の店主と決め、仕入れのやり方や経営手法を個人で本屋を始めた先達の話を積極的に聞いて回り、17年4月の「サンジョルディの日」に58歳で小さな書店をオープンさせた。その直前、頭髪を金色に染めた。不退転の決意だね。おそらくは再婚なのだろう。当時せがれはまだ3歳。看護師の妻にはすべて事後承諾だった。
 「Readin'Writin'BOOKSTORE」と名付けた本屋は、売れ筋の漫画などは置かず、絵本、浅草の本、ジェンダー、自分が読みたい本など5000冊を並べている。本屋には返本という制度があるが、利益率がちょっとだけいい「買い取り」の本ばかりを並べている。「八百屋と本屋の違いは日持ちがすること。僕の店は乾物屋でもある」と表現している。
 最初はなかなか売れなかったが、次第に常連も増え、短歌指導教室とか本づくりにまつわる店内イベントも結構やってきた。落合氏は連日、その日に最初に売れた本のタイトルをツイートしている。それが”ボウズ”だった日も今年5月初めてあった。店内イベントを通じて知り合った編集者からこの新書執筆を依頼されたようだが、街の本屋さんの一つの成功例なんだろう。ともかく一度この本屋を訪れなければという気持ちにさせた新書なのである。

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