「囲んでおるんか?やりたいのう」と栃木の新聞社で社長会長を務めた鬼瓦から電話があったのは、まだ緊急事態宣言が開けない3週間ほど前のことだった。俺たちいつものメンバーはノンアルコールの真剣勝負だが、鬼瓦は卓を囲みながら酒を飲むのが通例である。で「まだ、雀荘では酒のサービスはありません。宣言が開けたらセットします」と返事した。 その鬼瓦との昨年11月以来の中国語勉強会がこの前の土曜日、いつもの吉祥寺の雀荘で行われた。この日は俺が理事長の時にスタートさせたマンション管理組合の月1回の規約検討委員会とぶつかっていたが、現理事長には「久々の老人会に出なければいけないので」と欠席を連絡しておいた。 スタートは午後2時。雀荘の場所が分からない鬼瓦のため、駅南口のエスカレーターの前で5分前にお出迎えである。練馬に住む鬼瓦は、池袋、新宿経由でやってきた。メンバーは麻雀がメシより好きだが、このところ不調の組閣幹事長Sくん、6月に竹橋の関連会社の社長になり、鬼瓦と一緒にお祝いしたてっちゃんである。 開始早々、鬼瓦はハイボールを注文。おかわりが面倒なので、ビール用の大ジョッキを使用してもらった。前半俺とてっちゃんが順調な滑り出しを見せたが、鬼瓦の「社長、町会長はそんなクソ手で和るんか!」という恫喝に、次第に良い配牌が来なくなった。半荘が終わるとベルを鳴らして「ハイボール、お代わり!」相変わらず酒のピッチが早い。 中盤、鬼瓦に高い手が入るようになった。これはまずい。この麻雀はお金持ちから貧しき民にトリクルダウンさせるための会なのに……。夕方になると飲み過ぎの鬼瓦は半荘の途中で「悪い。1分だけ待って」とトイレに立つようになった。ふつうは半荘が終わった際に小用に立つのが礼儀だが、飲み過ぎの老人はおしっこを我慢できないようなのだ。終了までこのシーンが3回もあった。 午後9時過ぎ勉強会終了。結果は雀荘の独り勝ち。Sくん大敗。鬼瓦は別枠会計のハイボール6杯分の料金だけ勝った。この雀荘はビルの3階にある。帰りの階段で手すりにつかまりながら、よっこらよっこら降りる鬼瓦に、ちと老いたなという感慨を抱いたのだった。 × × × × 今週の拙宅の花はピンクの大輪のバラ「モンド」と白く淵がピンクのバラ「ドルチェヴィータ」、それに黄色のカーネーション「ミュンヘン」です。
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