耳にうるさい民放のテレビ番組は見ないことにしている俺だが、ザッピングしていてつい見入ってしまうことが時にある。この前はテレ東で通常は日曜の夕方にやっている松重豊主演「孤独のグルメ」の深夜の再放送に見入ってしまった。 この番組は久住昌之原作の人気コミックをドラマ化したもので、井之頭五郎という役名の松重がふらっと立ち寄った飲食店でその店の名物料理をただただうまそうに食うという内容。人間、食べなければ生存していけず、誰しも食への関心はある。テレ東はこういう隙間狙いで経費のかからない番組をつくるのがうまいみたい。 なぜ、この番組に見入ったかというと、銀座のロールキャベツという店に「あれ、こりゃ『四馬路』じゃないか」と思ったからだ。「四馬路」は俺が現役のころ1軒だけ持っていた銀座のバーで、店主の中村さんとは新宿ゴールデン街の「ふらて」「ゴールデンダスト」時代からの付き合い。知り合ってもう40年近い。コロナで全く行けなくなったが、テレビに映るカウンター、背後の壁に掛かっている世界地図には見覚えがある。 夜は10人も入ればいっぱいになるバーだが、4、5年前から昼もロールキャベツ定食1品を出す営業をしており、俺も新橋で校閲バイトをしていた時、一度だけ食べに出かけたことがある。そういう店がテレビで紹介されるのはなかなかうれしいものだが、テレビに映ったカウンターの中にいたのは中村さんではなく、ありゃぁ室井滋がママ役をやっていたのかな。 松重はこのロールキャベツは絶品と舌鼓を打ちながら、スープまで全部飲み干していたが、俺なんぞは昼休み時間が終わる前にバイト先に戻らないといけないので、じっくり味わうこともなく、地下二階の店を後にしたのだった。 番組では新たに来店してきた風を装った若いサラリーマン役が、「ここのママってウラジオストックでも店を出してたんだ」と紹介していたが、たしかに中村さんにはそんな時代もあった。コロナ下の酒提供の制限も来週から解かれるから、一度顔を出さないとな。このコロナ禍をどう乗り切ったのか、いや、そうではなかったのか、話を聞かないとな。 |
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