三味線を鳴らして新内を語るのが本職の柳家小春姐さんは、ギターをつま弾きながらボサノバも歌う。日曜夜、国立の音楽茶屋「奏」であった「和ボサの会」では小春さんの「ディサフィナ―ド」「海の思い出」などが日本語で聴け、久々に楽しいライブだった。 この「和ボサ」はポルトガル語ではなく日本語に訳したボサノバを歌う試みで、ギターの名人、加藤崇之氏が十年ほど前から取り組んでいる。この日のバックは加藤氏のほか、アルトサックスの巨匠、宮野裕司さん、パーカッションの藤ノ木ミカさん、ベースのアンちゃんという豪華な布陣。前座は「奏」では初お目見えのソプラノ歌手、渡辺麻衣さんと鈴木みさとさんが務め、「浜辺の歌」とか「七つの子」などを熱唱した。どうしてあんな高い声が出せるのかと思えるほどのクラシックの技量だが、楽しいという音楽ではない。 セカンドステージで登場した小春姐さんの歌は、たどたどしいという感じの歌い方で、けっして上手ではないと思うのだが、いいのである。染みてくるのである。声質がボサノバにピッタリなのか。宮野さんは時折、サックスをフルート、オカリナに持ち替え曲のムードに合った演奏。そして、加藤氏は「指が動かなくて」と言いながらも、しびれるギターの伴奏。知らず体を動かしていた。こういう音楽、好きだね。 小春さんが「まなざし」など5曲を歌い終えたところで、加藤氏が「まだ終わりたくないな。麻衣さんもみさとさんも入って」と「荒城の月」をアレンジした曲の大合唱となった。客席の俺たちも足を鳴らし、手を合わせ。2時間半のステージ終了後、小春さんに「うまくないのに、いいね」と暴言を吐いたが、一応、俺、彼女に猥歌を伝授した師匠筋に当たるので、許されよ。 小春さんは本名をイソノヨウコというのだが、昔のニックネームがサザエさんの「波平」であることを、初めて知ったのでした。この日のライブはステージが合計7人と多かったこともあり、客は10人。このくらい人がいると盛り上がっていいね。 |
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