ガキの頃、好きな歴史上の人物と問われると、竹中半兵衛、黒田官兵衛という豊臣秀吉の名参謀を挙げていた。自分は大将型でなく、参謀タイプと自覚していたのだろう。その黒田官兵衛が重要な役どころとして登場する戦国ミステリーの米澤穂信作「黒牢城」がきのう、21年下期の直木賞を受賞した。 この小説は21年の「このミステリーがすごい」(宝島社)、「週刊文春のミステリーベストテン」、「ミステリが読みたい」(早川書房)、「本格ミステリベスト10」(原書房)のいずれもでランキング1位の”四冠”を取ったから、直木賞の大本命とされていた。 俺は米澤氏(43)が14年に山本周五郎賞を取った「満願」、翌15年にミステリー三冠を取った「王とサーカス」のいずれも当時読んだが、ちょっと波長が違うと感じていたので、昨年6月に出て本屋さんに並んでいた「黒牢城」には手が伸びなかったのだが、直木賞の候補作になったことを知り、こりゃ読んでおいた方がいいかなと思い、年明け早々、読みだしたら止まらなくなり445ページの大作を2日で読了し、受賞を確信した。 これまでの「満願」「王とサーカス」と違って、舞台は戦国時代。天正6(1578)年、織田信長に反旗を翻して北摂津・伊丹の有岡城に立てこもった荒木村重は城内に起きる難事件に翻弄される。動揺する人心を落ち着かせるため、村重は土牢に閉じ込めて置いた織田方の軍師、黒田官兵衛に謎を解くよう求めた。官兵衛は謀反を起こした村重を説得するため、死を覚悟して単身、有岡城に乗り込み、捉えられ真っ暗な土牢に閉じ込められていたのだ。 官兵衛は持ち前の頭脳で4つの難事件の謎を解く。14年の大河ドラマで岡田准一が土牢につながれた官兵衛役をやっていたから記憶している方も多いだろう。米澤氏は武将同士の言い回しを見事に表現していたと思うな。息もつかせぬ面白さだった。 昨今の芥川賞は難しすぎて読む気がしないが、直木賞作品はすっと頭に入ってくるものが多い。「塞王の楯」で米澤氏と同時に直木賞を受賞した今村翔吾氏(37)の作品も読んでみるかな。昨年の候補になった「じんかん」というのが気にはなっていたのだ。 |
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