「五鉄の軍鶏鍋!」ゴルフでグリーン上でワンパットで決めるオリンピックのお遊びをしていて、こう叫ぶ時がある。パー4のミドルホールで鉄パットを決め、ボギーで上がった時に発する。池波正太郎の「鬼平犯科帳」で、かつて本所の銕(三郎)として無頼の限りをつくしていた火付盗賊改方長官、長谷川平蔵の行きつけの店が本所の「五鉄」。そこの名物料理が軍鶏鍋なのだ。 俺はテレビで鬼平を演じた中村吉右衛門が大好きで、平蔵が「五鉄」(おやじを密偵の相模の彦十=江戸家猫八=がやっていた)でくつろぐ時の伝法なセリフ回しに特にひかれ、一昨年あたりまで再放送していた「鬼平犯科帳」はよく見たのである。歳を重ねると重厚な時代劇に親しみを感じるようで、今は「雲霧仁左衛門」(中井貴一主演)の再放送をよく見ている。 その吉右衛門さんが昨年暮れ77歳で亡くなった。まことに残念である。歌舞伎役者が時折使う「○○のにいさん」という言い方になじめず、俺は歌舞伎を一度も観たことがないのだが、吉右衛門さんの自伝「夢見鳥」などの著作は手にしたこともあるのだ。 この前の日曜夜、NHKのEテレ「古典芸能への招待」で、中村吉右衛門の至芸という2時間番組があり、こりゃ目に焼き付けておこうと思って、歌舞伎の舞台を始めて真面目に見た。「忠臣蔵」の大星由良之助、「勧進帳」の弁慶などの名場面のほか、屈指の当たり役という「熊谷陣屋」のノーカット映像を1時間半見た。副音声の解説がなければとても見通せるものではなかったが、片岡仁左衛門とか坂東玉三郎とかの名人が集う舞台で吉右衛門演ずる熊谷次郎直実の姿はひときわ大きかった。 6年前93歳で死んだお袋は、85歳くらいまで毎月歌舞伎座に行くのを楽しみにしていたが、こりゃ食わず嫌いをしていて、ちょっと損をしたかなと思ったのだ。 × × × × 今週の拙宅の花は黄色の大輪のバラ「ゴールドラッシュ」と「モナリザ」という赤いアネモネ、それにピンク色の実をつけたヒプリカムです。
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