コロナの巣籠り生活2年余り。国分寺駅ビル8階の紀伊国屋書店はひんぱんにのぞくようにしているが、どんな新刊書が出ているのかの情報にうとくなっている。経験則から、面白い本に出会うのは口コミの場合が多いのだが、人と会うのを制限されているコロナ禍ではそんなチャンスも少ない。竹橋の新聞の読書欄だけでは情報が限られるのである。 ひと月ほど前、朝ドラの後の「あさイチ」を見ていたら、BSの旅番組の番組宣伝なのだろう、原作者の作家原田マハさんが出ていて、お薦め本を紹介していた。30歳にして美術の道を目指したマハさんの第一のお薦めは美術史の豪華本。これはちょっと手がでなかったが、一緒に紹介された東山魁夷の「風景との対話」を今、読んでいる。俺は魁夷はもっとも好きな画家の一人なので、50年以上も前の著作だが、内容は全く古くない。魁夷の画集を脇に置いて一緒に読むのはなかなかよい時間だ。 もう一冊は鈴木忠平作「嫌われた監督」。これは旧知の美人ライターCさんのツイッターを傍受していて「面白くて一日で読了した」とあったので、こりゃ面白そうと早速購入した。ロッテなどで三冠王を取り、中日の監督時代はずっとAクラスで、日本シリーズにも勝ったことのある落合博満監督の、プロに徹した姿にぐいぐい引き込まれた。 筆者の鈴木氏は元日刊スポーツの記者で、落合が中日の監督を引き受ける時に、駆け出し記者として走り使いした縁がある。ドラゴンズの黄金時代を築いた森野將彦、福留孝介、岩瀬仁紀、吉見一起、和田一浩、荒木雅博らの証言を基に落合流の監督術をしっかりとうかがわせた手法は見事。昨年の9月に出たのに、こんな面白い本があるのに気づかなかったのは、この「嫌われた監督」が俺がのぞく小説でもノンフィクションコーナーではなく、スポーツ本の棚にあったためか。 かつて政策情報誌時代に落合の「采配」という本を書評で取り上げ、2007年の日本シリーズで8回まで完全試合を続けていた山井大介を降ろし、抑えの岩瀬を9回に投げさせたことについて、弁解しない落合を称えたことがあったが、その試合の裏話も山井や森繫和コーチらの話で語られていて、あの試合がくっきりと思い出されたのだった。
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