昨年4月に80歳で亡くなった知の巨人、立花隆氏。氏と同時代に生きれたことを幸運に思っているが、その立花さんの人となりがよく分かる本を20年も前に読んだ。1993年から5年間、膨大な本の城「ネコビル」で立花さんの秘書を勤めた佐々木千賀子さんの「立花隆秘書日記」(ポプラ社2003年刊)だ。 出版業界にいる次女が本棚から持って行ったとばかり思っていたが、今月長女が西八王子の母親のところにあったのを持ち帰った。コレコレと再読したのだが、一番面白いのは、先代の秘書が辞めることになり、93年4月に立花が朝日新聞に学歴・年齢不問で秘書の募集広告を出し、そこで行われた試験の内容だ。 まず履歴書と自己紹介文、スナップ写真で書類選考。応募した500人の中から20人に絞り込み筆記試験と面接が行われた。スナップ写真は必要以上に女性を強調した人を落とすためで、立花曰く「あまりに美人だとこちらの気持ちがときめき過ぎて困るのでふさわしくない」。 秘書はムチャクチャに掛かってくる電話対応とスケジュール管理が主な仕事になるため、断り上手であることが要求されるほか、価値観を共有できることが大事。筆記試験の問題は@歴代の大蔵大臣の名前をできるだけ挙げよA科学者の名前をできるだけ挙げよB次の人物の職業、仕事のカテゴリーを述べよというもので、鎌田慧、石川六郎、チョムスキー、伊谷純一郎ら東西の文化人、経営者らの名前が約50人並んでいる。 その他、@よく見るテレビ番組Aいま2時間と2万円与えられたらどう使うかB最近腹の底から笑ったことCこれまでの人世で最大の失敗を尋ねる問題もあった。 筆記試験だけでなく、ぜひ立花に逢いたいと電話を掛けてきた女性への対応や関西弁で住民運動への協力を電話で依頼してきた男への対応をみる実技試験も。作家小松左京の秘書をしていたことのある佐々木さんは「私より優秀な人が何人もいたが、まんべんのない知識と電話での対応のうまさで合格した」とか。 5年間も仕えていると立花の女性の好みもよく分かったみたいで「小柄な方が好き。私170aを越す大女」という表現がとても面白い本であった。 |
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