安子・るい・ひなた――といえば、けさ怒涛の最終回だったNHKの朝ドラ「カムカムエヴリバディ」の3代のヒロインの名前。視聴率は18%台で、ドラマ部門の首位を独走しているから、全国でざっと3000万人はこの名前を知っているだろう。珍しく毎週欠かさず見ている大河ドラマ「鎌倉殿の13人」が視聴率13%だから、朝ドラの方が知名度は高いのだ。 さて、本日のつぶやきのタイトル「早乙女碧」を知っている人は何人いるだろう。まぁせいぜい1万人かな。文庫書下ろしで新潮文庫から3月に出た時武里帆著「護衛艦あおぎり艦長早乙女碧」の主人公で、海上自衛隊の二佐、44歳。離婚経験者で長男も海上自衛官。広島は呉を母港とする「あおぎり」の艦長として着任したばかり。 毎日新聞のエンタメ書評欄に紹介されているのをみつけ、自衛官をテーマにした小説など読まない俺が、テンポのいい書きっぷりにきのう2日間で読了。続編で出た「試練」ももう中ほどまで読み進んでいるのだ。 著者の時武さんは主人公の早乙女と同様、一般大から海上自衛隊の幹部候補生学校に入校し、三尉で退官し作家の道に入った人で、専門知識に裏打ちされた具体的で詳細な描写にグイグイ引き込まれる。そして、女性が少ない職場でトップとして荒くれの男たちを率いていく覚悟、物言いが実に面白い。 300ページ余の第1作は早乙女二佐が着任したたった一日に起きた事件を描いた、まだ「あおぎり」が着岸している時のお話で、「試練」は海に出て艦が動いている時のお話。女性艦長への男たちの見る目は厳しい。WAVEと呼ばれる女性自衛官の思いもさまざま。組織運営についても大いに勉強になる小説なのだ。 それで今、45年も前に公安担当として仕えた警視庁キャップKさんの言葉を思い出した。「皇室、自衛隊、公安警察。この3つは何をやっているか分からない世界。そこを担当するのは面白いぞ」。世の中には知らないことが多く、それを知るのは面白いことなのだ。この小説、絶対のお薦めです。 |
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