ロシアがウクライナに侵攻してきのうで3カ月になる。当初、首都キーウの陥落もと懸念されたが、ウクライナ側の善戦でその事態は避けられた。しかし、東部ドネツク、ルガンスク州では依然として激しい戦闘が続いており、ロシアの侵攻がやむ気配はない。21世紀にこんな蛮行が許されるのかと、大学バド部同期のスカイプおじさん懇談では「ゴルゴ13に頼んでプーチンを暗殺するしかない」という見方が主流になるほど、無力感を覚える日々だ。 ブツブツ言っていても始まらないので、国際問題にうとい俺だが、少し勉強してみようかと、時々テレビに不機嫌そうな顔をして出てくる軍事専門家の小泉悠・東大先端科学技術研究センター専任講師の「現代ロシアの軍事戦略」(ちくま新書)を読み、目からうろこが落ちる思いをした。この300ページの新書は、まだロシアが侵攻する前の昨年5月に出版された本。 その中でウクライナとロシアの戦いは、2014年にロシアがクリミア半島を占領併合した時(この時は一発の銃弾も発射されていない)から、もう8年も続いていることが強調されている。本が出た昨年初頭までにドンバス地域では軍人・一般市民の1万3000人が亡くなったという推計もある。ロシアの侵攻は3カ月ではないのだ。このクリミア占領の際、アメリカやNATO諸国は何もできなかった。日本の報道機関も継続的な報道をしてこなかった。 14年以降もロシアはウクライナに対し、電磁波攻撃を繰り返し、電力供給をストップさせたり、ウクライナ兵士のスマホにニセ情報を流すなどしてきたという。この新書によれば、ソ連の崩壊により、かつて東側のワルシャワ条約機構に加盟していたポーランドやバルト三国、ブルガリア、ルーマニアまでがNATOに加盟したことで、ロシアは大変な危機感を抱いており、ソ連の一部だったウクライナまでもがNATOに加わりたい意向を持っていることに、横腹にピストルを突き付けられている感じになっているというのだ。 我々の世代は東西冷戦時の大国ソ連のイメージが強いが、ロシアのGDPは世界11位に過ぎず、国防費もアメリカの10分の1、中国の5分の1程度。軍隊も実勢90万人でNATOの欧州加盟国の兵力185万人の半分以下というのだ。だから、プーチンは核兵器使用も辞さないというブラフを使わざるをえないという。 ともかくずっとロシアの軍事演習をウオッチしている小泉氏の説明にはなるほどを思わされるところが多い。この新書を読めば読むほど、ロシアは簡単に引き下がるとは思えなくなってくる。ウクライナのゼレンスキー大統領も「我々の領土を取り戻すまでは戦い続ける」とクリミアの奪還まで考えている様子。こうなると戦争の長期化は避けられず、数年後に高笑いするのは、どう考えても中国だな。 × × × × あすは年長組による平日ゴルフのため”明日休診”です。 |
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