「近々メシを食おう」ってな言葉を現役時代よく聞いた。しかし、”近メシ”が実現することはまれ。「いい天気だね」くらいの軽い気分で使われていたフレーズなのか。でも、言われた方はそれなりに身構えるものなのだ。素浪人になってコロナ禍もあり、この「近メシ」の言葉を聞くことはとんとなくなったが、きのう近メシが珍しく実現した。 誘ってくれたのは有名なノンフィクション賞をかつて受賞したことのある名文家で知られる9コ下のFくん。竹橋の会社でシニアスタッフとしてまだ働いているが、3月から何と4カ月も自費で南米に自由取材の旅に行っていた。先週だったか帰国挨拶の電話があり「近々メシでも」の話がすぐまとまった。 ちょうど明後日のゴルフコンペの賞品を新宿のゴルフショップに買い出しに行く用があったので、猛暑を潜り抜けて歌舞伎町の中華でメシを食うことになった。 Fくんの長男坊はチリでクライマーをしており、自分も少しは登るFくんも一緒に岩登りをやったようだが、せがれが登攀中に事故で右手親指の先を切断する事故に遭い、その傷口の写真などもメシ前に見せてくれた。 長女はロサンゼルスで映画の脚本の仕事をしており、そこにも十日ほど滞在したとか。世界を股にかけて生きている家族だな。それにしてもシニアスタッフとはいえ、4カ月も通常勤務を休めるなんて、よほど文才を買われているんだろう。 竹橋の新聞のコラムの質の低下について、Fくんの嘆くこと、嘆くこと。今やSNSで個人が情報を発信できる時代になり、新聞テレビなどの実力と信頼度が落ちているという点で意見は一致したのである。 紙面の私物化が記者にとって一番楽しいことなのだが、Fくんが外遊前に長期連載したある登山家の人物伝(21回、1回200行)について「思い入れのない俺達にはちょっと読むのが辛かった」と感想を申し上げたら、「有名人ではない人間をどう書くかが課題」とか言っていたなぁ。 |
|