きのう朝9時半過ぎ、雨の降り出したなか、西国駅前の「エ・プロント」に入ろうとしたら、この店でよく合うおじさんと鉢合わせした。「雨が降ってきましたよ」と言ったら、傘を持っていないおじさんは「そうか、もうしばらく雨宿りしていくか」と喫煙コーナーのあるブロックの奥の彼の定位置のテーブルに戻った。 駅北口に住むおじさんはそこでモーニングを食べ、産経新聞とスポーツ報知に目を通すのがルーティーンなのである。おじさんと話をするようになったのは4カ月ほど前。お互いタバコ好きで、喫煙ボックスで一緒したりするうち世間話をするようになった。俺の素性は全く明かしていないが、彼は75歳で、内幸町にあった機械関連の商社勤めをリタイアした年金暮らし。 若い頃、クラブの女の子に入れあげたあげく結婚しなかったため独り暮らしで、最初に話し込んだ別れ際に「他人と話すのは5日ぶりです」と言うのでちょっとかわいそうになった。しかし、会えば話をしなければならないので、俺の朝のルーティーンである毎日新聞朝刊を読み切れなくなるので、最近は食後のコーヒーは国分寺駅ビルの「タリーズ」を利用することが多かった。きのう「エ・プロント」に寄ったのは、国分寺駅ビルがお盆で全館休館したためだ。 おじさんの隣の席でアクリル板をはさんで「コロナはまだまだ大変ですね」などと話しかけると、ワクチンを一度もしていないというおじさんは「気をつけなくちゃ」。で、1、2回目のワクチン接種率は80%台で「5人に1人はしていないんですね」と毎日新聞社会面を示すとおじさんは納得した顔をした。 スマホで雨雲レーダーの様子を見せてあげたら、まだガラケーのおじさんはいたく関心を示した。「パソコンと同じで検索もできます」と高倉健のウィキペディアにアクセスしたら「山本富士子を見せてもらえます?」「へぇ、90歳になるのか。きれいだったなぁ」「すいません、五月みどりもお願いします」「へぇ、4回も結婚してるんだ。きれいだったから、男が寄って来るんですね」。それで何十年かぶりに「かまきり夫人」なんて単語にもお目にかかったのである。
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