30代は吉行淳之介、40代は藤沢周平、50代は宮城谷昌光、60代は葉室麟の本は全部読むようにしてきた。いま3人が鬼籍に入り(宮城谷氏は存命)、書店に入って読みたい本が見つからない時が、一番恐怖を覚える瞬間だ。そんな時は無理しても、本を買うことにしている。きょうもそうやって武田砂鉄氏の単行本を求めてきた。ということで9月に読んだ本。 高瀬隼子著「おいしいごはんが食べられますように」。夏の芥川賞受賞作。単行本ではなく全文掲載の文芸春秋9月号で読んだ。率直な印象は、こんなちまちまとしたテーマで受賞してよいのだろうかというものだ。そういう時代なのか。真田正明著「朝日新聞記者の書く力始め方終わり方」。朝日夕刊コラム「素粒子」を担当していたこともある記者の文章論。ついこの手の本に手を出してしまう。 養老孟司・池田清彦著「年寄りは本気だ」。中身はほとんど忘れてしまったが、本気度は感じた。今井伸著「射精道」。俺の同期生に著者と同姓同名の男がいて、著者名とタイトルに惹かれて手にした。中身はいたく真面目だ。橘蓮二著「落語の凄さ」。笑福亭鶴瓶とか春風亭昇太らの芸にかける思いを演芸写真家の著者が紹介。高校生の頃、俺はよく落語会に出かけていたのだ。 荻原魚雷著「中年の本棚」。「四十初惑」など魅力的な言葉が出て来る本だが、もはや中年を遠く過ぎてしまった俺にはちょっとな。山口謠司著「あ” 教科書が教えない日本語」。このタイトルなんて読むのか。感じは分かる。そんな不思議な日本語について熱を込めて語った新書。70年も使ってきて知らないことが多いのが日本語だ。 奥田英朗著「リバー」。今年の本のベストテン入り確実。9月30日に「渡良瀬ファイブ」と題してつぶやいた。内澤旬子著「カヨと私」。イラストも描き文章もうまい内澤さんの本は「飼い喰い」などを読んできたが、小豆島に移住した内澤さんがヤギを飼い、続々生まれるヤギたちに振り回されながら、ヤギとの暮らしを楽しむ様子がすごい。 |
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