西国駅前の「エ・プロント」で半年ほど前から言葉を交わすようになった後期高齢者のおじさんがいる。タバコスペースで一緒になることが多いそのおじさん。独り身の年金暮らしで、本を読むこと以外にやることがないので、今年の始めから競馬の必勝法を研究し始め、ついに絶対プラスになる馬券の買い方にたどり着いたという。 俺も競馬は毎週メーンレースだけ友人に買ってもらっているので、この数カ月おじさんから必勝法についてのいろんな話を聞かされ「他人に勧める前に、自分で買って蔵を建ててくださいよ」とたきつけていた。 先週末、おじさんから「週末は立川のウインズに行くので、月曜は成果の話を聞いてくださいよ」と真顔で言われたので、きのうの朝は「すき家」での朝メシの後、「エ・プロント」に出撃した。店に入るとおじさんは大きく手を振る。テーブルの上には「スポーツ報知」の土日の競馬欄がある。 「いかがでした?」と尋ねると、おじさんは堰を切ったように話し始め「土曜は初めて手にするマークシートの書き方が分からず、取れているレースを外したりした。それで頭に来て、日曜は5時起きして報知を手に立川に行き、24時間営業のマクドナルドで12レース分の買い目をマークシートに記入し、10時前にはウインズに行って、馬券を1レース当たり800円、12レース分で計9600円買った。ウチに帰りラジオで競馬中継を聞いたら、ワイドはプラスだったが、三連複は惜しいレースが2つもあり、トータル3000円の負けかな」とのことであった。 おじさんの買い方はスポーツ報知の競馬欄の各レースの馬柱のところに載っている人気指数が上位の馬2頭と△がついている馬の中で指数が大きい2頭を選び、上位2頭を軸に△への2点計4点のワイドと4頭の三連複計4点を買うというスタイル。年初から報知の人気指数とレース結果を穴のあくほど見つめてたどり着いた結論とか。 これで三連複万馬券も1日に1つはあるというのだ。各馬の臨戦過程どころか馬名も見ず、機械的に4頭を選ぶ。日曜は阪神競馬場でG1秋華賞が行われ、三冠牝馬の誕生なるかが注目されていたいたが(残念ながら俺は1着3着)、おじさんが買ったのは東京競馬場の全12レースだけで、G1など眼中にない。 ちょっとしょんぼりのおじさんに「負けたってまた来週もある競馬かな、という駄句もあります。週末を迎えるのが楽しくなったでしょ」と申し上げた。おじさんは日曜の敗戦を踏まえ、「前のレースで1着に来た馬の番号を次のレースで引っ張って来ることがままあるから、これを加えて必勝法を改善したい」と話したが「それだとレースごとに馬券を買わなければならないから、疲れますよ」とご忠告申し上げたのである。 |
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