急に寒くなった。今夜は満月。きのう見上げた月は、随分高いところにあった、ということで、先月読んだ本。 矢崎泰久・和田誠著「夢の砦」。副題に二人で作った雑誌「話の特集」とある。1965年に創刊された「話の特集」はしゃれたデザインが売り物のかつてない雑誌だった。3年前亡くなった和田誠が全ページのデザインを担当した。俺も手にした記憶がある。中でもすごいのは和田誠による川端康成の「雪国」の文体模写で、彼は天才だね。各号の表紙を並べたカバーも素晴らしく、これは横尾忠則の作品とか。実に贅沢な雑誌だったのだ。 小倉孝保著「踊る菩薩」。伝説のストリッパー、一条さゆりの生涯を毎日新聞の名文記者がまとめた。大阪社会部時代、小倉は一条が亡くなる1年前の1996年、大坂・釜ヶ崎に住む彼女に初めて会いに行った。それから一条の華やかな時代の取材も重ね一代記をまとめた。表紙の一条の写真は美しい。本郷和人著「歴史学者という病」。大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の時代背景が一番分かるのが本郷氏の文春新書「北条氏の時代」。その本郷氏が自らの足跡を記した。割と面白かった。 羽鳥好之著「尚、赫々たれ 立花宗茂残照」。文芸春秋社で長らく編集者をしていた著者が会社勤めを終え、人生の終盤をどう生きたらいいかを肌で感じつつ書いた時代小説。立花宗茂は関ケ原で西軍についたにもかかわらず、徳川2代将軍、秀忠にかわいがられ、3代家光の御伽衆の一人となる。その家光から関ケ原でなぜ家康の東軍が勝利したかと尋ねられ、さあ、どう応える宗茂……というお話。年寄りの話は辛くもあるのだ。立花宗茂については葉室麟さんが「無双の花」で取り上げ、好きな戦国武将なのだ。 堂場瞬一著「小さき王たち第3部 激流」。新潟を舞台に3代にわたる政治家と新聞記者の対立のお話だが、期待したほど面白くはなかった。原田マハ著「楽園のカンヴァス」。読書感想文の課題図書にしたため、5年ぶりくらいに再読。原田さんは自身がキュレーターをしていただけあって、美術関係の記述がウソっぽくない。やはり面白かったのだ。 立花隆著「いつか必ず死ぬのになぜ君は生きるのか」。立花の膨大な書物から、人間とは何かを考え続けた立花の言葉を東大立花ゼミの若手が抜き出して新書にまとめた。昨年80歳で亡くなった立花。生きていればなぁと思うのは俺だけではないと思う。
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