大晦日、昼前コーヒーを飲みに出かけようとしたら、玄関先で黒猫のお兄さんと鉢合わせした。「お届け物です」。はて、そんな心当たりもないしと宛名を見ると同期のAくんである。ド・ドールから戻って包みを開けてみると「都電モナカ」の16個入りの箱だった。中に封書があって、大きな字による「30年前に死んだ父から借金返済と礼状は早い方がいいと口を酸っぱくして言われていた」という書き出しであった。 11月に3年ぶりの同期会を四谷の貸し切り蕎麦屋で挙行し、13人が集まったことはその月の21日にここでつぶやいたが、Aくんは「G13の集まりは楽しかった。これも永久幹事のお前のおかげである。面と向かっていうのは恥ずかしいから、そのお礼としてモナカを贈る」というのである。 これには少々驚いた。俺は竹橋の会社関係者によるゴルフコンペとか大学ゼミの集まりなど、いろいろな幹事業務をやっているが、そのお礼としてこのような品をいただくのは70年以上も生きてきて初めてである。Aくんとは賀状のやり取りもなく、さほど親しいという間柄ではないが、コロナによる3年巣籠りを経ての同期会がとても嬉しかったに違いない、と勝手に想像した。 その会合では写真部だったKくんにたくさんスナップ写真を撮ってもらい、各人に4,5枚ずつ送付(もちろんプリント代は当日の会費から出した)したから、そういう写真の被写体になることのまれな年長組は喜んだのかもしれない。 都電モナカは電車の車両を模した直方体で皮には電車の外壁の模様があり、求肥が入っていてなかなかうまい。全部食っては大変なことになるので娘たちにもおすそ分けした。 で、大晦日Aくんには「ありがたくモナカは頂戴する。幹事は一番楽しめるんだよ」と筆ペンで鳩居堂の絵葉書に丁寧にお礼の言葉をしたためたのである。 |
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