2022年の我が国の出生数は79.9万人で、初めて80万人を割り込んだ。俺らよりちょっと上の団塊世代(1947〜49年生まれ)では軽く260万人を超えていたから、当時の3分の1だ。俺が今は内閣府になってしまった経済企画庁を担当していた92年、国民生活白書に「少子化」という言葉が初めて使われ、人口減への警鐘が鳴らされたが、その後も出生率の低下に歯止めがかからない。当時から「日本経済は人口減に耐えられるか」という企画案を何度か出したが、一度も採用されなかった。 俺は経済の基本は人間の頭数だと思うんだよね。ちょっと考えれば、ランドセル屋は50年前に比べ3分の1しか売れなくなり、人が少なくなれば将来の国内消費はジリ貧になる。当時、政府の要職にあった高級官僚に「誰か人口問題についてちゃんと考えているんだろうなぁ」と尋ねたら「みんな自分が課長でいる2,3年タームでしかモノを考えていない」という答えが返ってきて愕然とした覚えがある。 医学の進歩で寿命は延びているが、人口を保つには1組の夫婦から2.08人の子どもが生まれなければならないとされる。それが合計特殊出生率は1989年にショックと言われた「1.57」となり、2021年には1.30まで低下した。ワンジェネレーションを30年とすると、2050年前後の出産適齢期の女性の数は現在の約3分の2と計算されるから、そこで1.30の出生率が確保されたとしても、子どもの生まれる絶対数は0.66の2乗=0.44で、現在の44%程度の35万人程度にとどまる。 厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が15年ほど前に推計したところによると、2004年の1億2700万人をピークに人口が減り始めたわが国は2055年には9000万人を切り、2105年には4400万人になる。俺はそんな時まで生きてちゃいないからいいけど、こりゃ大変な世界だ。だいたい非正規社員が増え年収が300万円程度の人間が結婚して金のかかる子育てなんか、する気にはなれないよな。 キシダくんは「異次元の少子化対策」を掲げてはいるが、防衛費と違ってお金の裏付けがない。少子高齢化など人口のピラミッドを基に考えれば誰だって予測できるせかいなのに、霞が関のお役人たちは21世紀に入って23年もたつのにいったい何をやってきたのかね。政治家に振り付けをするのも彼らの役目でしょ。 長く政権の座にあったシンゾーくんの口から本気の少子化対策の言葉が出たこともなかったなぁ。とにかく、出生数が80万人を切ったいま、国防より取り組むべきは少子化対策だと思うな。 |
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