きのうは東京駅の東に1年ぶりに出撃した。銀座にただ1軒持っているバー「S」の以久子ママの誕生日に当たっていたからだ。昨年は店まで出かけたものの、空振りに終わり、この日を逃してはいつ逢えるか分からない。新宿であさってのゴルフコンペ用の優勝者名を記す紅白のリボンを購入。おずおずとマスクを外して地下鉄に乗り、銀座に赴いたのだった。 地下1階の「S」に入ると、4年ぶりの元気な以久子ママがいた。カウンターの上の大きな花瓶には白いユリの花。夜はバー、昼はロールキャベツ一品の定食の営業をしている「S」。松重豊の「孤独のグルメ」に出たこともある。新橋で校閲のバイトをしていた時に昼メシに寄って以来か。以久子さんは俺より1つ上だから、さすがに歳は隠せない。 先客は料理の買い出しに出かけたみたいで、客は俺一人。まずは長寿を寿いだ。俺はここではシーバスの薄めの水割りを飲むのだが、ママの話が止まらず、なかなかグラスが出てこない。娘たちの現況を話したあたりで、ようやく水割りが出てきた。 と、買い出し部隊のおじさん入店。どうも同業者OBの風情。おじさんが三越の地下で求めた刺身、太巻き、サバ寿司、麻婆豆腐がドンドン出て来る。そのうち北九州から上京したこれも同業者OBが来店。彼のお土産のおいしい明太子もいただいた。この北九州氏、以久子さんが34年も前、竹橋の新聞夕刊サラリーマンページに5週に一度書いていたコラム「女は見てるぞ」のことを知っていたので、「実は私がペンネーム『鬼百合』の名付け親です。最初は『小百合』という案もあったのですが、これはちょっとね。ママと商社とか銀行のキャリアウーマン4人に書いてもらったが、朱筆が一つも入らない完全原稿でした」と秘密を打ち明けた。 それから以久子さんにはいろいろなところから原稿の注文が来るようになったらしい。そんな元気な彼女だが、時にウツになることもあり、そんな時は朝昼晩店屋物を取り、家に籠っているとか。40年以上の付き合いだが、これは初めて知ったなぁ。銀座の店を始める前は、新宿ゴールデン街で飲み屋を2軒やったが、その時に知り合った「噂の真相」の故・岡留安則さん、菅直人元首相などの懐かしい話も出た。 とにかく久しぶりに会ったので、話は実家のある青森・弘前の話、新宿時代の話とあちこちに飛び、あっと言う間に3時間半。水割りを3杯飲み、デザートにメロンまで食った。チョコレート菓子までもらってしまった。あんなに「S」で食べたのは初めて。「また、来てね」の声に送られ別れたが、コロナの3年はさぞ辛かったろうなぁ。 |
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