俺は今まで何にも考えずに西欧の名画を見てきたと思わされた本を読んだ。大原美術館館長をしている高階秀爾氏(91)の岩波新書、「カラー版名画を見る眼T(油彩画誕生からマネまで)とU(印象派からピカソまで)」の2冊である。この新書、Tの初版が1969年刊行、Uが71年刊行。俺の学生時代ではないか。 これまで全く手にしたことがなかったが、5,6月に取り上げている名画をすべて大きくカラー化し、参考図版も計120点以上収録、文章は初版当時のままで出版された。俺、絵を見る時はぱっと見て、気に入った色彩とか構図の絵なら、時間をかけてのぞき込むが、そうでなければスーッと通り過ぎるだけだったが、大先生高階氏の蘊蓄はすごく、絵画に隠された意図や意味を詳述。特に西欧の絵画は宗教性が高いから、そういう分野の知識のない俺なんぞ、へーっ!と思うところが多かった。 例えば、ゴーギャンの代表作に「イア・オラナ・マリア」ってのがあって、南国の赤いドレスを着た女性が子どもを抱いている色彩豊かな絵だと思っていたが、これは女性と子どもも頭上に「円光」が描かれているから、「タヒチ人のマリアとイエス」を描いた絵なんて記されているのを読むと、絵を理解するのに深みが違う。 モネの「パラソルをさす女」なんか右向きの習作もあったとカラーで示されると、光の描き方のすごさになるほどと思ってしまう。2冊の新書で紹介されているのは、Tがファン・アイク、ボッティチェリ、レオナルドダヴィンチ、ラファエロ、デューラー、ベラスケス、レンブラント、プーサン、フェルメール、ワトー、ゴヤ、ドラクロワ、ターナー、クールベ、マネの15人。 Uがモネ、ルノワール、セザンヌ、ゴッホ、ゴーギャン、スーラ、ロートレック、ルソー、ムンク、マティス、ピカソ、シャガール、カンディンスキー、モンドリアンの14人。もっと早く手にしていたら違った絵画の楽しみ方があったのにと思わせる名著だった。 × × × × 今週の拙宅の花は薄紫色のバラ「オーシャンソング」と紫色のカラー、それに剣先咲きの白いカーネーション「スタースノーテッシノ」です。 |
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