隠居志願のつぶやき2017

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...... 2023年09月15日 の日記 ......
■ 「黒い海」読んだ   [ NO. 2023091501-1 ]
 かつての生業も影響してノンフィクション作品は割りと読んできた方だ。大宅壮一ノンフィクション賞とか講談社本田靖春ノンフィクション賞を受賞した作品なら、取材手法、表現力などの点で間違いない。先日ことしのこの両賞を取った伊澤理江著「黒い海 船は突然、深海へ消えた」を一気に読み、なんでこんな優れた作品の存在に今まで気が付かなかったのかと恥じた。
 この伊澤さんは1979年生まれだから40代半ばか。英国のウエストミンスター大大学院のジャーナリズム学科の修士を修了した人で、新聞社やPR会社をへて、フロントラインプレスというネットメディアで取材、執筆活動をしている。
 「黒い海」で取り上げたのは、2008年6月、千葉犬吠埼沖350キロの海域で起きた漁船「第58寿和丸」の転覆事件。この事故では乗組員20人のうち3人が助かり、4人が死亡、13人の遺体が見つかっていない。
 国土交通省運輸安全委員会の結論は、三角波をかぶって転覆というものだが、伊澤さんは事故から11年たった19年、この漁船の持ち主や生還した3人のインタビューなどを通して、転覆は波をかぶって起きたのではなく、潜水艦の衝突によるものと推論していく。
 運輸安全委員会の調査報告書では転覆により海に漂った重油は一斗缶一つ程度の15〜23gとされたが、漁船から海に転落して生還した3人が油まみれになって小型ボートに乗り移るのに非常に苦労し、亡くなった4人も油で真っ黒になっていたことから、船腹のオイルタンクに穴が開くほどの衝突があったのではと主張する。
 伊澤さんは海上自衛隊の潜水艦隊司令官だった元海将にも話を聞き、自衛隊の潜水艦だったら修理が必要で絶対隠し通せるものではないが、米軍の潜水艦だったら日本に連絡しない場合が多々あるとの証言を引き出す。運輸安全委員会の報告書は、圧力がかかって流出した油の量を極めて少なくせざるを得なかったことをうかがわせる内容の著作である。
 事故から十年以上もたって粘り強く関係者から話を聴き出す姿勢には感銘すら覚えた。この漁船の持ち主は福島県漁連の会長をつとめ、先月から実施されている原発の処理水放出では、漁業者の反対の意見を主張する立場にあった人。伊澤さんはその会長から事故当時の全行動記録の書かれた手帳を託されるほどの信頼を得た。この伊澤というライターの今後に注目したい。文章もとてもうまく、「黒い海」はなんと日本エッセイスト・クラブ賞も受賞しているのだ。
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 今週の拙宅の花は、ピンクの大輪のバラ「オールフォーラブ」と白いバラ「アヴァランチェ」です。
 
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